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家に帰ると、大量のてるてる坊主が俺を出迎えた。
「げ、なんだよこれ」
「見てわかるでしょ。てるてる坊主」
妹の陽菜は、俺と目も合わせず黙々と紙を丸め続ける。
「こんな大量にいらないだろ。こえーよ、儀式かよ」
「いいでしょ、別に」
陽菜はやると決めたら誰の言葉にも耳を貸さない。
昔からそうだった。
何か目標を決めたら、それに向かって努力する奴。
頑張り屋で、真っ直ぐで。
「雨降ると野球部の活動が中止になっちゃうんだよねぇ」
どうやら、最近好きな奴ができたらしい。
「野球部のためにこんなの作ってるのか?」
「ちょっと勝手に触らないでよ! 放送室の窓から見えるのよ、グラウンドが」
部活中の好きな奴を見物したいというわけか。
「告れば?」
「んー。告られ待ち」
「なんだそれ」
「告白してフラれるのやだし。それに、先輩は私の気持ちに気付いてると思う」
「なるほど、相手は野球部で上級生なのか」
「わっ、今のなし! これ以上詮索したら殺すから!!」
「自分からいかねーと一生てるてる坊主作るだけで終わりそうだな」
「うっさい……!」
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