熱帯夜

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熱帯夜

 クーラーが壊れため、部屋の中は蒸し風呂状態だ。  扇風機を回してはいるけれど、暑い空気を掻き回しているだけなのでほとんど涼しさは感じない。  いっそ窓でも開ければ少しは涼しくなるのかもしれないけれど、俺はやたらと虫にたかられる体質で、網戸をしていてもどこからか虫が入り込んでくるから、暑くても窓を開ける気はになれなかった。  とりあえず、明日以降のことは明るくなってから考えるとして、今夜を凌ごう。  冷えたお茶で辛うじて涼を取り、その勢いで眠ることにしたのだが、暑さで寝つけずにいたらふいに窓が開いた。 「暑すぎる…」  ここは四階で、外から誰かが窓を開けるなんてことはできない。いやそれ以前に、窓には鍵がかかっていたから室内からでなければ明かないし、それより何より今の声は。  窓が開いたせいだけじゃなく、すっかり背筋が冷え切った。今夜はもう、クーラーどころか扇風機すら必要がなさそうだ。 熱帯夜…完
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