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「さら?どうした?こっちにおいで」
当たり前のように、いつものように、そう私の名前を呼ぶ彼に、その場に突っ立ったままだった私は彼の元へと急ぐ。
やっぱり!生きてたんだ!そうだよ!あれはリョウじゃなかったんだ!
もぉ、今までどこにいってたの?
頭ではわかってるくせに、私の心はそう自分を騙そうとする。
「リョウ!会いたかった!」
そう言って彼の胸に抱きついたとき、やはりそれは夢じゃなかったんだと実感してしまう。
ひんやりとした彼の体は、人ではないものだった。
唇を寄せても手を握りしめても、体温を感じることが出来ない。
それでも、私は彼に会えたことが嬉しくて、一晩中彼のそばでいろんな話をした。
彼はときおり静かな笑みを浮かべながら、青白い顔を私に向けて話を聞いてくれていた。
いつの間にか眠ってしまったらしい私が次の日の朝目を覚ますと、そこにはもう彼の姿はなく、あれは夢だったのだと思うしかなかった。
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