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けれど、それから雨の降る夜には必ず、彼は私を訪ねてきた。
まるで、気が済むまでずっとさらのそばにいるよ……
そう言われてるみたいな気がした。
彼を奪った雨があんなに嫌いだったのに、彼に会うことができるからという理由で待ち焦がれるようになっていった。
そして一ヶ月が過ぎ、結婚するはずだった日。
それが、今日だったのだ。
きっと彼は私の気持ちの整理がつくように
もう二度と自分で命を絶つことのないように
見張っていたのかもしれない。
最期に見ることの出来なかった彼の顔を、人ではない姿で見せにきてくれたんだと思った。
そして彼の最期の言葉。
「さら、今までありがとう。僕の分まで生きて。ずっと見守ってるから」
きっと、それを言いに来てくれたのかもしれない。
だから、私はもう雨の日を待つことはないだろう。
そしてきっとそれは、彼から私への最期のプレゼント。
最悪な日を思い出してしまう雨の日を、素敵な思い出に変えてくれた彼のためにも、私は大切に彼の分まで生きていこうとそう誓った。
end
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