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それでも最後のこの時間を大切にしたくて
雨のベールに切り取られたこの空間の、時が止まればいいと願わずにいられない。
お互いの存在を確かめるかのように抱き合いながら、私は今日で終わりにすることをそっと告げた。
「……リョウ……もう、終わりにしよう?……もう、会えない」
絡められた指先にキュッと力がこもる。
わざと背けた顔を覗き込まれて、どうしようもなく愛しさがこみ上げた。
「泣かないで?」
そう優しく囁かれて、我慢していた涙が溢れ出す。
泣くのはやめようって決めてたのに……
笑ってさよならしようって決めてたのに……
いざ、もう会えないんだと思ったら、胸が締め付けられるように傷んだ。
だけどもう決めたから。
いつまでも私のわがままで彼を縛り付けちゃいけない。
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