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「さら……もう、大丈夫なのかい?」
……僕がいなくても君は一人で頑張れる?
そう言って彼は私の髪を撫でる。
あとからあとから涙が溢れ出して、ついには嗚咽に変わった。
この優しい手の温もりを覚えていよう。
慈しむように触れてくる手と愛おしむような声。
本当はずっとこうしていたい。
でもそれじゃダメだって、自分でもわかってるから。
涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げて、震える唇を彼に押し付ける。
ひんやりとした感触が、私を正気に戻していった。
「リョウ……もう大丈夫……ウッ……グスッ…ヒック……今まで……ウッ……ありがとう」
そう言った瞬間、さっきまでしていたサーッという雨音が聞こえてこないことに気づいた。
窓の外を見ると、雨のベールはすっかり取り払われて、月の光が差し込んできている。
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