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また自殺を図るんじゃないかと心配する両親が、幾度となく連絡を寄越してきても、私はそっけない返事をするだけだった。
そんなときだった。
彼が亡くなった日と同じような雨が降る夜、この部屋に訪問者が現れたのは。
--ピンポーン
きっとまた両親が訪ねてきたのだろう。
そのとき私はそう思っていた。
何度も鳴らされるチャイムに重い腰を上げたのはどれくらい経った頃だろうか?
仕方なくという言葉がしっくりくるようなドアの開け方をした先に立っていたのは。
会いたくて会いたくてたまらなかった、死んだはずの彼だった。
「やあ、さら、久しぶり」
当たり前のようにそう言うと、彼は慣れた様子で部屋の中に入ってくる。
私は何が起きたのかわからなくて、呆然と彼の背中を見送った。
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