もしかして初恋?

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「な、だから、その、馬鹿!阿呆!」 「……、やっと出た言葉がそれか」 「あったりまえだろう!何考えてんだ馬鹿兄貴!」 「俺だっていろいろ悩んださ。何年も考えた結果がこれだ」 「開き直るなよ!」  もう知らない、と部屋を出ようとした。が、それを長男が許すはずがなく叶わずに終わった。 「わっ」  暖かな腕に囚われる。振り向きもせず、その腕に顔を埋めた。 「そんな俺でも好きなんだろ?」 「……無駄にいい声すんな、馬鹿!」  今度こそ香夜の手を振り払って部屋を出た。 「夕兄―? なんかあった?」  夕希の叫び声を聞きつけた奈津が心配そうに近寄ってくる。奈津が左側にくっつくと、右側にも温かさを感じた。 「夕兄ちゃん、顔真っ赤だ」 「葵……奈津も。心配してくれてありがとな。なんでもないよ」  双子を腕にくっつけたまま、居間に向かう。昼食をすっぽかしたためか、夕希の腹の虫が今更飯を食わせろと訴えて来ていた。 「そっか。大丈夫だって葵」 「ならいいけど」 「ただ……」 「ただ?」  葵の髪を撫でながら夕希はつぶやく。 「悪い狼には気をつけろよ」 「狼?夕兄、狼なんて見たの?」 「奈津、動物園に行かないと狼いないって。もう日本のはみんな絶滅したから」 「じゃあ、どこに?」 今度は奈津の頭を撫でながら言った。
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