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プロローグ
夕焼けに染まった公園に四つの影が並んだ。
春を迎えたとは言え、まだ寒さを感じる。
桜宮香夜は身を震わせるとコートの襟を寄せた。
「葵、奈津。明日は小学校の入学式だろ。そろそろ家に帰らないと」
そう声をかけたのは二つ下の弟、夕希だった。こちらも寒いのか、しきりに腕を擦っている。
「わかってるって。な、葵」
「うん、もうちょっとだけ」
双子の葵と奈津は、寒がる兄二人を余所に公園を駆け回っていた。
「葵、奈津」
「何?香兄ちゃん」
香夜に呼ばれた葵が、こちらを振り返る。奈津には声が届かなかったらしく、公園の隅の方へ走っていった。
「せっかく、父さんが日本に帰って来ているんだ。お前らと遊べなくて、寂しがっていると思うぞ」
両親の顔を思い浮かべなから、香夜は小さく笑った。きっと今頃父親は玄関の前で、双子の帰りを待っているに違いない。
「分かった。帰る」
「奈津を呼んで来てくれるか?」
「まかせて。僕、お兄ちゃんだし」
「頼んだぞ」
葵の背中を見守る。
ふと、左肩に温もりを感じた。横に視線を向ければ夕希が寄りかかっている。香夜を壁に風を避けに来たのだろう。
「葵も奈津もおっきくなるの早いなぁ」
夕希が言った。
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