序章

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暗い部屋の光源となっている、パソコンの画面。 新しいメッセージが来ていた。 ユキヤ『こんにちは。 昨日は、神田剛(かんだごう)について、熱く語ってしまってすみません。 kouさんが、とても聞き上手なので、つい、暴走してしまいました。 でも、こうして話せる相手ができて、俺はとてもありがたいと思ってます』 私はその下にある返信のボタンをクリックする。 kou『こんばんは。 いえ、ユキヤさんのお話はとても楽しくて、僕もついつい乗ってしまいました。 神田監督作品は、本当に僕も好きです。 また、お時間が合えば、是非、語り合いましょう』 送信をクリックしてから、私はため息をついた。 「……僕、か」 私は別に、普段から自分を僕と呼ぶたちではない。 いい年をしてそんなことをしていたら、かなり引かれるだろう。 だけど、ここでだけ、私は”kou”という男性なのだ。 そして、他では絶対に口にできないことを、こうして吐き出すことが出来るのだ。 今夜も私は、kouになる。
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