一番のお願い

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決して早い結婚ではなかったけれど、まだ三十代前半だったから避妊さえやめればすぐ妊娠するだろうとたかをくくっていた。  結婚当初は、葵もフルタイムで仕事をしていたが、半年たっても一年たっても妊娠しないので、思い切って妊活に専念しようと仕事もやめた。  ストレスと思われることは、できる限り排除し、毎日のんびりと過ごし、栄養バランスを考えた食事をして適度に運動し、基礎体温をきちんとつけタイミングを見てやっているのに、どうしてできないのだ。葵は、これまで慎重に避妊してきた自分がバカみたいに思えてきた。過去付き合った男の中には、頑固に避妊するよう言う葵にうんざりして行為の途中、険悪になった相手もいる。もっとも、そういう時の態度で男の誠実度を測ることができたのだから、まあ良かったとも言えるのだが。  とにかく、いいかげん妊娠しなくてはならない。  仕事もやめた以上、もう後には引けない。  自分の親も夫の親も初孫に期待している。  そして、誰より葵自身が自分の子供を欲しいと思っているのに。
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