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…からだがうごかない おかあさん、おとうさん、、どこ…? う… 節々の痛みを我慢して、なかなか力の入らない瞼を開ける。 気を抜けば、今にも閉じて眠ってしまいそう… だめ…だって、おかあさんが…あかちゃんが… 辛うじて開いた薄目に映るのは赤いナニカ。 …わたしをだきしめてくれるおかあさんのうでのなか。 なまぬるい、ドロリとした液体が顔についている。 ぎぎぎ、と壊れたおもちゃのようにほんの少し顔を動かせば、フロントガラスから半分出たおとうさんが見える。…腰から上はちぎれかけている。 お、とう、さ、ん… 口を開いたけど、言葉にはならなかった… …ぴくり おかあさんのうでがうごいた。 「…ぉ、か、さん」 うごいてなかった。 もううごかなかった。 ひだりうでとからだでわたしをまもり、みぎてはおなかのあかちゃんをまもってた。 私の弟か妹ができたお祝いに、旅行に出かけた。 高速道路でトラックに追突された。 中央分離帯に突っ込み、シートベルトをきちんとしていなかった父はフロントガラスを突き破り、母は隣に座っていた私を、お腹の赤ちゃんを守る様にして亡くなった。 行き残ったのは、私だけ。 小学校2年生、だった。 幸せの絶頂から地獄へ落とされた。
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