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再び訪れた静謐なひととき。
庭の紫陽花を通り越した向かいの部屋には、弟子が訪ねてくる前に干した洗濯物。
雨降りとはいえ、経った時分からして今頃はなかば渇いた頃だろうか。
ぼんやりと考えながら弟子の言葉を待つ。
「先生、よぉくわかりません…」
「まだまだ勉強が足りませんね。
女性歌人はすまし物と自身の心の在りようを重ねています。
…よいですか?」
先生の問いに弟子が真剣な眼差しを向ける。
「家の入口をどんなに見つめても恋焦がれる待ち人は訪れない…
あぁ…寂しい寂しい…
やりきれない気持ちは降り続ける雨のように私を苛み続ける…
恋に濡れる心と、いっそ渇いて楽になりたいという心の狭間にある…
私の心はまるで、なかば渇いた洗濯物のようではありませんか…」
先生が弟子の真剣な眼差しを見つめ返した。
「先生、よぉくわかりました!
いつも勉強になります」
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