~1ヶ月~

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「あんた頑張ったよ!頑張った!」 と言っていたのが気になって、 さすがにその時ばかりは、思わずどついてしまった。 生きている人に向かって、 過去形で言わなくてもいいじゃないか。 まるでもう頑張らなくてもいいみたいじゃないか! そうしたら「今までも頑張ったんだから、 もっと頑張らなくちゃダメじゃないか!」と 言い直していた。 今充分に頑張っている人に向かって、 それを言うのも酷だと思ったが。 じゃあどう言えと? 難しい。 朝が来て、あの人は息をひきとった。 冷たくなったけど、ただ寝ているだけみたいにも見えた。 今まで点滴などを処置してくれていた看護師さんが わらわらと来て、今度は別の「作業」に取り掛かる。 血の着いた服を取り替えるために脱がせた時、 鬱血して桃のように赤くなっていたあの人の身体を見た。 いつの間にかこんな風にまでなっていたなんて、 多分あの人自身も解らなかっただろう。 その後の展開は、考える有余すら無く、ただ慌しく 今日までつづく…。
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