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女子たちが彼女を排除しようとする理由が何となく分かってしまうのが嫌でならない。虐めとは強者が弱者をいたぶるだけでなく〝出る杭は打たれる〟という言葉がある様に特質した何かを持つ者が大多数に狙われるという事もあるのだ。それはいい意味でも悪い意味でも。彼女は将にその前者。どうにも接しにくい。
高校始まっての自己紹介以来全く耳にしていなかった彼女の声は容姿に劣らず美しく、まるで鈴の音のようだ。その衝撃と話してはいけない人と話してしまったという何とも醜い感情が相まって、気持ちの悪い声が漏れてしまった。
しかし柏手さんがそれを気にする素振りは無く、柔らかく微笑んで両手を後ろへ組む。普段学校で見る彼女とは似ても似つかぬその表情に、何故か身の毛がよだつ。
「一緒に帰ろっか」
ああ、そういう事か。僕は彼女の笑顔を見つめ、その理由を本能的に悟ってしまった。
別に観察する必要や、考え込む必要なんてない。彼女の〝瞳〟を見れば一目瞭然だったんだ。
――目が笑ってないんだから。
誰かに見られてしまったら僕迄虐めの対象になってしまうのではないか。そんな惨めな考えを頭の隅に置きつつ、柏手さんと歩く事十数分。彼女の提案で少し帰路から外れた公園で座ることになった。
僕の知る限り、ここら周辺に公園と呼べる場所は一つしかない。が、その公園はもう使われていない廃公園とでも言おうか。数年前にその公園の名物だった巨大なジャングルジムが長年野晒しにされたことで倒壊、その際近くで遊んでいた子供数名が巻き込まれ亡くなってしまったという事件があった。それ以降立ち入り禁止の看板を立てられ放置されているとんでもない場所なのだ。
何度か公園を更地にするための工事が行われたみたいだが、不可解な出来事が多発する事からそれも中止され、今では本当に誰も寄り付かなくなっている。周囲も木々で囲まれていて中を覗けるのは出入り口となっている二か所のみ。あまりの不気味さから心霊スポットにすらならない公園として近所では有名になっている。
恐らく、彼女の脳裏にも同じ考えが張り付いているのだろう。柏手さんが向かう先は将にその公園のある地区だったのだから。
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