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更にそう続ける柏手さんは、僕にしなだれかかる様に倒れ込む。思わず抱き留めた僕は、女性独特の柔らかな感触にドギマギし、しかし人とは思えない体温の無さに身体が震えた。
顔に掛かる彼女の吐息がやけに甘く、僕の心臓が爆発するのではないかと思う程加速していく。見つめ合うように重なった視線は鍵でも掛けられたように反らす事が叶わず、いつの間にか潤んだように輝く彼女の瞳に吸い込まれそうになる。
本当に何が起こっているのか理解できない。僕は何をした? 彼女は何をしている?
幾ら思考を巡らせど、答えは出ない。いや、出せない。彼女の息が、彼女の体温が、彼女の雰囲気が、彼女の視線が、僕の全てを狂わせて行く。
「あ――ああ――……」
言葉にならない息が口を出て柏手さんの顔に掛かる。しかし、彼女は何一つ気にする様子を見せず、舌なめずりして僕を見つめる。
「やっと見つけたんだ。私の――私の可愛い坊や。私が面倒を見てあげよう。私が全てを教えてあげよう。私が――」
「ッ――!?」
不意に訪れた唇への衝撃。何事かと理解した時には、彼女の舌が僕の口の中を丹念に犯し始めていた。
唐突過ぎる出来事の連続に、目を白黒させる――が、次に訪れた衝撃に思考が全てストップする。
何かが僕の腹を――貫いたのだ。
そして僕の意識は闇に落ちた。
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