灰色の神様

「どっちですか？　叶えてくれるほう？　連れて行くほう？」
「え？」
「神様ですよね？　死神ですか？　白でも黒でもないのですね。」
俺は自前の灰色のパジャマを着ていた。
「死神ではないかな」
「じゃあ、まだ生きていられるのですね」
その大きな目にあふれる、切実な思いに向かって、
「大丈夫だよ」
としか言えなかった。
　本当に俺が神様だなんて思っているのか、からかっているだけなのか。でも、少女は俺が神様らしき存在だという前提で、自分の病気のこと、家族のこと、そしてただ一つの「病気を治したい」という願いを語った。
　子どもの臓器の提供を待つしかない少女に、無力な俺は、下っ端の神様のふりをすることぐらいしか思いつかなかった。
「会ったこともない、一番偉い神様でも、人間の寿命を変えることはできないんだ。でも、俺には君の未来が光っているのが見えるよ。これって大丈夫ってことだよ。先輩の神様が言ってたんだ」

　そんなことを、次の夜もその次の夜も少女と話した。俺に合わせてくれているのか、少しは慰めになっているのか、少女は笑顔を見せてくれた。