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「神様!」
意識のほうの俺の手を、小さな手がぎゅっと握った。
「どうしてここに…」
聞きかけたが、少女を見てやめた。ここに彼女の肉体は来ていないことがすぐにわかった。彼女の顔色が今までとは違って健康そうに輝いていた。
「ごめんよ…、俺…」
「あなたは戻らなくちゃ。ねっ、神様」
少女は笑顔で、消えて行った。
俺は涙があふれて止められなかった。俺の肉体も涙を流していた。
目を覚ますと、まだ体が動かせないでいた。母は泣いて喜んでいた。
(君が俺の神様だ…)
俺はベッドを少し上げて、窓の外を見ていた。窓から入る風が大きくカーテンを揺らすと、少女が現れた。きらきらと輝く銀灰色のドレスを身に着けていた。
「神様でしょう?どちらですか?」
俺が問いかけると、驚いて、そして笑って、申し訳なさそうに言った。
「神様、ごめんなさい。連れて行くほうなの」
俺は笑って言った。
「もう十分に生きましたよ。連れて行ってくれるのだから、天使ですね」
俺の神様は、俺のしわしわの手を握って、笑顔を見せてくれた。
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