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灰色の神様
(あー、入院生活は退屈だ…)
痛みが取れて、食欲も出てくれば、家に帰りたくなるものだ。だが、退院の許可が下りるのはまだ先のようだ。
点滴のおかげで腹はすかないが、日中、薬のせいなのか寝すぎてしまうようで、夜になると目がさめる。
看護師に見つかるとうるさいから、巡回の時間を避けて、夜中にそっと部屋を出た。
売店も閉まっているし、常夜灯だけのラウンジでは雑誌を読むこともできない。
ただ、病棟をこそこそとウロウロするだけの暇つぶし。
通りかかった部屋の中から、少女の声が聞こえた。確かに幼い子どもの声だ。こんな時間にまだ起きているのか。
「お願いです。明日も生きていられますように」
よく聞こえるようにと扉に近づくと、
「誰?」
(え? 気づかれた?)
焦って動けないでいると、パタパタと足音が近づいて、あっという間に扉が開いた。
「…えーっと」
不審者でしかない、俺のこの状況をどう説明しよう。あたふたしていると、少女は、
「入って、早く」
と俺の手を握って部屋に引き入れた。
しばらくは看護師に見つからないかなと、少しほっとしながらも、まだうまい言葉が見つからないでいると、矢継ぎ早に
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