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「あれは建物か?」
紅露はその影に向かって湖沿いに歩いて行った。玄野もそれに続く。
近づくにつれてぼんやりとしていた輪郭が徐々にはっきりしてくる。
「やった、やっぱり建物だ。それにしてもこんな森の中にこんな立派な建物があるなんてなぁ」
薄ぼんやりした霧の中から現れたその湖のほとりの建物は、窓を見る限り2階建てで、前時代的な煉瓦造りの洋館だった。その壁には蔦が這っており、古さを物語っている。
その洋館は湖を背にして佇んでいたので、二人は正面へ回り込もうとした。まさにその時、玄野は背後の湖から並々ならぬ妖気を感じ、振り向いた。
「どうした?」と玄野を訝しんで、紅露も振り返る。
湖は水面に大きな波紋を携え、その下には黒い影が蠢いていた。
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