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主
「ほう、それを見たとはあなた方はついてるのかもしれない。それは『湖の主』ですよ」と目を細めて喜家村公宣は言った。
喜家村公宣は湖のほとりの洋館の主で、二人の突然の訪問にも快く応じ、「この霧の中、森を歩くのは危険だから中に入って下さい。他に人もいるが、良ければ泊まってもらっても構いません」と紅露と玄野を笑顔で引き入れた。
洋館を見つけ喜びながらも、人が居るのかどうかも怪しんでいた二人にとって、この相手側からの申し出は思ってもみなかった有り難いもので、「御迷惑でなければ、お願いします」と直ぐに頭を下げた。その様子を「いえいえ」と喜家村は微笑みながら見ていた。
「『湖の主』ですか」
「ええ、池や湖などの閉鎖された空間では独自の生態系ヒエラルキーが作られます。そんなヒエラルキーの頂点に立つのが『主』と呼ばれる存在なのです」
喜家村はコーヒーを一口啜り、続けた。
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