おじさんは地球人?

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 ウェイトレスが、コーヒーを置いた。コーヒーは、月でも焦げ茶色の色をし、温かそうな湯気をあげている。口元に運ぶ。香りも味も、地球と同じだ。 「月に行ってこいって上司に言われた時は驚いたし、抵抗があったけど来てよかったよ」 「抵抗ですか?」 「ほら、やっぱり、宇宙旅客機に乗って、地球を離れて月へ行けっていうのは、やっぱり少し恐かったんだ。まだ宇宙での事故はないけど、宇宙空間で死んだらどうなるんだよ? とか思っちゃって。それに、月は地球とは結構違うなんて噂もよく聞くからさ」  月では、得体の知れない麻薬のようなものが流行っているであるとか、宇宙人が紛れているとか、地球人差別もあるんじゃないか、なんて同僚に散々脅されたが、取り越し苦労だった。 「月はどうですか?」 「意外と、悪くない。それどころか、地球よりずっといいと思うよ。月はまだ、人が多くないしね。地球の渋谷なんて、最悪だ。もう、人が多くて歩けたもんじゃない。ここには、ああいう騒がしさがない」  私がそう答えると、ウェイトレスはふふんっと鼻を高くし、胸を張った。お国自慢をしたい、というのは月の人も同じらしい。いや、お星自慢、なのだろうか。     
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