おじさんは地球人?

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 脇に置いてある、お土産の詰まった紙袋を見る。月煎餅に、月饅頭、「月に行ってきました」と書いてあるクッキーなどを買い込んだ。地球に帰りたくねぇなぁ、と胃の底の方がざわつく。  月はなんとなく、長閑だ。大気がないので、カプセル状に覆われている建造物の中でしか暮らせないが、それでもいい。  地球から見える月は黄金色に輝いているけど、あれは太陽の光なんかを反射しているだけで、月自体が輝いている訳ではない。月面自体は灰色で、無機質的というか、荒涼としている。でも、地球のような雑多な感じはなく、なにもないことを開き直る潔さを感じ、好感が持てる。  月の人は重力が弱いからなのか、とても大らかだ。現地を案内してくれた人や取引先も、ケンケンしてないし、ビジネスビジネスもしていない。「頼み事? いいよ」と快諾してくれる心優しい人々だった。  地球からメールが届き、こちらの都合でスケジュールや予算を調整しなければならず、急なお願いで申し訳ないなと思いながら、おそるおそる提案をしたのだが、「あっ、そうなの? ちょっと大変だけど、がんばってみるよ」とにこやかに言われた。かと言って、それで後から何かを要求してきたりもしない。損得勘定の、「そ」の字も無いのか、と驚嘆した。     
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