おじさんは地球人?

4/7
前へ
/7ページ
次へ
 何かに似ている、と思ったら、自分の住んでいた田舎に似ている。長野県の山奥にある小さな村で、みんなが大らかで助け合うことに抵抗がない。餅つきや夏祭りのイベントに参加したり、迷子を探したり、野菜の収穫を手伝ったことを思い出す。  カウンターに座っている白髪のマスターは、頬杖を突きながら、テレビ中継されているスポーツを眺めていた。ここが地球だったら、接客態度云々とクレームがきてしまうだろう。 「月にきた地球の人が、ガッカリして帰っていくって言われて、ショックだったんですけど、よかったです」 「ショック?」 「なんだか、SF映画? みたいな世界を期待してくるみたいで。前に来たお客さんは、車は飛ばないのかってガッカリしてました」 「あぁ、そういうのは、確かになかったな」  だが、むしろ、月のいい所はそういうSFチックな所ではなく、のんびりとしている新しい場所、というところではないだろうか。三十八万キロも離れた場所まで来て、何故せかせかしたいのだろう。  アポロ計画から、もう何年経ったのか。月面への移住計画で、アメリカが、「まず、月にはメリカが行くからちょっと待って」と他国を牽制していたから、実際にあの時に月面に行ったのかは怪しいが、それでも、昔から人間は月に憧れを抱き、ついに月に住むようになった。 「この、のんびりしている所がいいのにな」 「おじさん、いい人!」     
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加