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何かに似ている、と思ったら、自分の住んでいた田舎に似ている。長野県の山奥にある小さな村で、みんなが大らかで助け合うことに抵抗がない。餅つきや夏祭りのイベントに参加したり、迷子を探したり、野菜の収穫を手伝ったことを思い出す。
カウンターに座っている白髪のマスターは、頬杖を突きながら、テレビ中継されているスポーツを眺めていた。ここが地球だったら、接客態度云々とクレームがきてしまうだろう。
「月にきた地球の人が、ガッカリして帰っていくって言われて、ショックだったんですけど、よかったです」
「ショック?」
「なんだか、SF映画? みたいな世界を期待してくるみたいで。前に来たお客さんは、車は飛ばないのかってガッカリしてました」
「あぁ、そういうのは、確かになかったな」
だが、むしろ、月のいい所はそういうSFチックな所ではなく、のんびりとしている新しい場所、というところではないだろうか。三十八万キロも離れた場所まで来て、何故せかせかしたいのだろう。
アポロ計画から、もう何年経ったのか。月面への移住計画で、アメリカが、「まず、月にはメリカが行くからちょっと待って」と他国を牽制していたから、実際にあの時に月面に行ったのかは怪しいが、それでも、昔から人間は月に憧れを抱き、ついに月に住むようになった。
「この、のんびりしている所がいいのにな」
「おじさん、いい人!」
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