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おじさんは地球人?
「ねえねえ、おじさんは地球人?」
宇宙港のそばにある小さな喫茶店の、月面を一望できるカウンター席に座っていたら、声を掛けられた。「地球人」と呼ばれたことが新鮮だったことと、振り返った所にいるウェイトレスが、背が高くスタイルのいい美人だったことに、更にどきりとする。
「あぁ、そうだよ」
「へぇー、観光ですか?」
「仕事だよ、仕事」
私の働く会社の支社を月面に作る計画があり、その下見にやって来た。現地の人との打ち合わせや、立地確認などが主だが、ほとんど観光みたいな仕事だ。地球では忙殺されるのではないかと思っていたが、いい息抜きになった。月面クレーターを利用した、静かな海市なんかは割と開拓されていたし、月面の低い重力を利用したスポーツの観戦も、かなり興奮した。
低重力で行われている、ラグビーともサッカーともアメフトともとれないスポーツは、ふわふわとしていて、スピード感があるんだかないんだか判然としなかったけど、初体験で面白かった。月への移住が進んで来て、こちらには新しい文化がある。まさに、日進月歩だ。
「あっ、ご注文のコーヒーです」
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