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キングの軽い口調に呆れながらも、作業へと戻る。
待ちきれない様子で私の手渡したプレゼントを開けるキングは、どことなく幼さが見えてちょっと可愛いなと思ったのは不覚だ。
「おぉ、お洒落なネクタイピン。瞳依ちゃん、本当ありがとう」
中身を急いで取り出して自分のネクタイについていたネクタイピンを外し、それを着けたキングに嬉しい気持ちが沸き起こる。
何にしようかさんざん迷った挙げ句、宝石屋で見つけたそれ。
値段はそんなに張るものじゃないけど、これだ! って思ったんだよね。
シルバーの台座に金色の王冠の付いたネクタイピンは、キングのイメージにぴったりな明るい感じのデザインだ。
キングだから王冠とかありがちだと言われてしまえばそれまでなんだけど、私の中のキングのイメージにピッタリハマったんだよね。
「気に入ってもらえて良かったです」
「どう? 似合う? なぁなぁ、快斗どう?」
私を見て嬉しそうに笑った後、三村さんに感想を迫るキングに肩を竦める。
「ええ、とても似合っていますよ」
「だよな。俺、一生の宝物にする」
力一杯そう言ったキングに私は焦った。
「なっ、それは大袈裟すぎます」
あんな安物一生の宝物とかこっちが気を使う。
お願いだから止めてください。
「だって瞳依ちゃんからの初めての贈り物なんだよ」
「いや、それはそうですけど。出来れば普段使いにしてもらいたいです」
街を統べるキングなんですからね。
普段から質の良い高そうな物を持ち歩いてるのに、私のあげたネクタイピンなんて不釣り合いすぎる。
「むーり」
「無理じゃないですってば」
「毎日付けるし、得意先の訪問にも付けていく」
「ほんっと、止めてください」
キングの品位落ちますから。
気軽に選んだ物が、まさかの事態を引き起こした。
百歩譲って、社内だけにして欲しい。
「気に入ったのは分かりますが、市原さんの願いを聞いておかないと次からは催促しても貰えなくなりますよ」
咎めるような視線をキングに向けた三村さんは、私の味方をしてくれるらしい。
あー良い人です。
「そ、それは困る。じゃあ会社でだけ付けとくよ」
「まぁ、それならOKです」
せっかくあげたし着けて貰えるのは、やっぱり嬉しいもんね。
思いの外喜んでくれたのは予想外だったけど。
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