誕生日と初めてのドレス

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「何を言ってるんですか。まったく」 呆れ顔の三村さん。 「今度のパーティーのドレスそろそろ用意しなきゃだろ」 キングの言葉に、忘れていた記憶が蘇る。 あぁ、そう言えばパーティーでキングのパートナー務めなきゃいけなかったんだ。 どよんと重くなる気持ち。 「社長は裏予約があるので、ドレスを買いに行くのは俺が連れていきます」 ピシャリと三村さんが言うと、 「えぇー快斗だけずるい」 不服そうにキングが反抗する。 「やっぱり、私も行かなきゃいけないんですか?」 少しの期待を含んで言ってみると、 「ええ。業務命令です」 取り尽くしまもなく言われた。 三村さん、私には荷が重すぎます。 「瞳依ちゃんのドレス俺が選びたい」 「それは無理ですね」 「・・・チッ、うぜぇ」 黒いキングが登場した。 「やりたい事を主張したいならば、早く周囲の整理をする事ですね」 さぁ、さっさと片付けましょう、私に向かってそう言うと三村さんは作業を再開させる。 キングが悔しそうに顔を歪めて、溜め息をついていたのがとても印象に残った。 この人はどうしてこんなにも私を構おうとするんだろうな。 それに、キングが前より裏予約に積極的じゃなくなってるのはどうしてだろう。 楽しくて仕方ないって感じだったのに、最近はおざなりな感じがするし。 まぁ、裏予約が無くなっても、私には普通の受付係の仕事があるから、どっちでもいいんだけどさ。 「瞳依ちゃんに似合うドレス買ってやってよ。お金に糸目はつけないからね」 「ええ。そうしますよ」 2人共、平然とした顔でそんな事言わないで欲しいよ。 一回しか着ないドレスなのに、高額な物なんて必要ないし。 「あの、そんな良いの要らないと思いますけど」 「ダーメ! 瞳依ちゃんのドレスはパーティー会場で一番良いのじゃないと」 「いやいや、それはちょっと」 キングは何を言ってるんだか。 「社長の言うのは少し大袈裟ですが、社長の隣に立つのならそれなりの服装でないと困るんですよ」 「はぁ」 さいですか。 別に立ちたく無いんですけど、そう言うならもう好きにしたらいいと思う。 私には分からない世界だし、そうする必要があると思うなら、そうしてくださいよ。 少し投げやりな気分になった私は、ブラックノートに書き込む手をいそいそと早めた。
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