2440人が本棚に入れています
本棚に追加
「本当にここで買うんですか?」
三村さんに連れられてやって来たのは、入った事も無い様な高級ブティック。
どの服も手垢が付くのが怖くて触れそうにない。
「ええ。ここは購入したドレスを購入者の体型に補正もしてくれますしね。市原さんは少し小柄なので補正をして貰える所と思いまして」
そんな理由かよ。
なんて恐ろしくて突っ込んだりは、勿論できない。
遠回しにチビだと言われてる気がしたのは気のせいだろうか。
だいたい三村さんと2人きりで、街に出た辺りから私の緊張はレベルMAXに達してる。
その上、三村さんの車でここまで連れて来られて、戸惑う暇もなく店内に引きずり込まれたのだ。
なんの拷問だって思うよね。
「いや、でもなんか、場違いかなとか思うんですよね」
恐縮したまま隣の三村さんを伺う様に見上げる。
「キングの隣に立つのですから、それ相応の物を着てもらいますよ」
「・・・はい」
私が何を言っても三村さんはここで買う事を決めてる。
彼の鋭い眼光に、頷く他無かった私を誰か慰めて。
こんな高いドレス着なきゃいけないなら、パーティーなんて行きたくない! なんて事は言えるはずもないし。
三村さんの圧力に屈した私は、ワラワラと集まってきたブティックの店員に取り囲まれた。
「三村様いらっしゃいませ。こちらのお嬢さんのドレスをご用意させて頂いたらよろしいのですね」
お店の服を着た店長らしき人が両手をすりすりしながら三村さんに媚びるように話しかける。
「ええ、電話でお願いした通り、彼女に似合うドレス一式を用意しください」
すっごい怖い言葉が聞こえて来たんですけど。
一式ってなんですか、一式って。
「畏まりました。何点かご用意しておりますのでお嬢さんに試着をお願いします」
前半は三村さんに向けて、後半は私の方を見て言った店長。
「市原さん、俺はそっちのソファーで座ってますので、ゆっくりと試着してくださいね」
悪魔の微笑みを置き土産に三村さんは去っていく。
「へっ? あ、えっと」
戸惑う私を無情にも1人残された。
「さぁ、こちらですよ」
「お嬢さんはとてもお可愛らしいので、見立てがいがあります」
「張り切ってがんばりましょう」
などと言う店員に背中を押されてフィッティングルームへと連れ込まれた。
そこからは・・・本当なんとも云えない気分だったよ。
着ていた服をひん剥かれ、次々と試着させられ、そして私は灰になった。
最初のコメントを投稿しよう!