誕生日と初めてのドレス

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彼が現れたのは、三村さんと一緒に訪れた宝石店のドアを押し開けようとした時だった。 「めーいちゃん」 聞き覚えのあるその声に振り返ると、笑みを浮かべたキングがいて。 はぁ? どうしてここに。 今ってデート中だよね。 頭に浮かんだ疑問は、 「来ちゃった」 とおどけたように私の肩を抱き寄せたキングによって吹き飛んだ。 「近いです。離してください」 ここをどこだと思ってるんだ。 こんな人通りの多い通りで何してくれる。 キングの登場に沸き立つ周囲、視線は私にまで向かってくる。 「瞳依ちゃん、相変わらずの塩対応」 何が楽しいのがニヘらと笑うキングに、殺意が湧いたのは気のせいじゃない。 「どうしてここが分かったんですか?」 冷え冷えとした瞳でキングを見据えた三村さん。 「この街で俺の知らない事はない」 上手いこと言ってるけど、あんまり面白くないよ、キング。 ほら、三村さんだって半目で呆れてる。 「そうですか」 突っ込むことなくスルーする三村さん。 「何か反応しろよー」 面白くなさそうに唇を尖らせたキングは、 「反応をする必要性を感じません」 三村さんによって一刀両断される。 「瞳依ちゃんは反応してくれるよな?」 私に振るのは止めて欲しい。 そんな期待を込めた視線を向けられても困る。 「三村さん、入りましょうか」 スルースキルを発揮して、宝石店の店内へと足を進めた。 馬鹿馬鹿しいことに付き合うのは時間の無駄だもんね。 「そうですね。時間が勿体無いですし」 三村さんはそう言うと私を追いかける様にやってくる。 「あーもう2人共俺の扱い雑過ぎ。キングなのに」 辛すぎなんて、全く辛そうじゃない声で言いながら、キングも店内へと入ってくる。 「「「いらっしゃいませ」」」 フォーマルな格好をした店員達が一同頭を下げて迎え入れてくれる。 高級感たっぷりな店内に、足がすくんだのは秘密だ。 生まれてこの方、こんな場所に用なんて無かったんだから仕方ないと自分に言い聞かせて、静観を保った。
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