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高級宝石店は社員教育も行き届いているせいか、不躾な視線は向けられはしないものの、興味津々な空気を漂わせてる。
大方、キングと私の関係性とか気になってるんだろうな。
ネタをこれ以上提供するつもりもないので、後ろからちょっかいを掛けてくるキングは一先ず無視した。
いつも、この人相手だと軽口を叩いて言い合っちゃうんだよね。
そのせいで、毎回周囲から微妙な視線を向けられるのに。
私もそろそろ大人にならねば、心にそう決める。
奥の部屋に通された私達3人の前には珈琲とお茶菓子が置かれてる。
フカフカのソファーに座り部屋を見渡した。
白ベースのシックな作りの部屋の壁には、私でも知ってる作者の絵画が飾られていて、室内には耳障りのいいピアノ音楽が流れてた。
お金持ちって、普段こう言う所で買い物するんだね。
初体験にドキドキした。
さっきのブティックでも思ったけど、場違い過ぎる。
キングに関わらなかったら、私は一生こんな世界を知ることは無かったんだろうな。
店長が見繕って来る貴金属だって、目が飛び出る程の値段がついてるに違いない。
本当、このまま逃げ出したいよ。
「瞳依ちゃん、落ち着かないの?」
何故か私の隣に陣取ってるキングが心配そうに顔を覗き込んできた。
「そりゃそうですよ。こんな所初めて来たんですから」
「緊張する程のこと無いって。ここには俺達3人しか居ないし」
「そう言う問題じゃないんですよ」
そりゃ他の客の不躾な視線が無いのはいいけど、そう言うんじゃない。
「まぁまぁ、リラックスして珈琲でも飲んで」
ポンポンと肩を叩かれる。
「はぁ・・・いただきます」
キングの出してくれた珈琲では無いが、一先ず飲む事にした。
カップを手に取って気付く、この珈琲カップもマイセンじゃん。
何から何まで高級か!
あーもう割ったらどうしよう、取っ手を持つ手が振るえた。
「ドレス、瞳依ちゃんに似合ってたね。当日楽しみだ」
本当に嬉しそうに言うキングは無邪気に笑う。
遊び人なのに、笑顔が可愛いだなんて思えてしまう。
もう、色んな意味でドキドキする。
変な緊張感から早く解放されることを願わずには居られない。
「あんな高級なドレスを用意してもらって良かったんですか?」
後で請求なんてされても払えないし。
「いいのいいの。お金の事は気にしなくても」
ね? とウインクされた。
いやいや、普通気になりますから。
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