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楽しいのかよく分からない食事会はキングの主導の元に進む。
「仕事の方は問題ない?」
「はい、予約者の人も節度ある行動をしてくれてます」
あの誘拐事件もどき以来、キングは事ある毎に心配してくれる。
マナーの悪い予約者は、次々と排除されていってるみたいだし。
「そう。社内で何か困った事はないかな?」
「あーそうですね。先輩方が良くしてくださるのでそれも問題ないです」
みんな一癖も二癖もあるけど、基本優しくて親切だし。
キングの専属受付係をやってる私を妬む人なんて1人も居ない。
他の部署には若干名、これみよがしに嫌味を言ってくる人は居るけど、特に何かをされた事もないしね。
「そう、なら良かった」
「心配してくれてありがとうございます。初めはどうなる事かと思いましたが、今は雇ってもらえて良かったと思える程には居心地いいです」
歩道橋で声をかけられ、半ば無理矢理就職されられたけど、まぁ今はこの会社が好きだ。
「ククク、それは良かった」
テーブルに頬杖をついて、優しくて微笑んだキングの色気がだだ漏れてる。
それは私に向けてくれる必要のないのですよ。
微妙にドキドキするので止めてほしい。
「市原さんは社内や訪問者の間でも、愛想がいいと評判ですしね。これからも励んでください」
三村さんに褒められるとむず痒い。
「はい、頑張ります」
通常の受付係と裏予約の方もね。
三村さんは私の言葉に満足したように目を細めると、グラスの中のワインを一口飲んだ。
この人もあの冷たい目をしなければ、本当に美形なんだよね。
三村さんの冷たい瞳は樹と同じ類のモノだと最近気付いた。
彼女もまたあの目をしなければ、周囲に無尽蔵に男の子が集まってきそうだもん。
「あ・・・」
ふっと樹の事を思い出した途端に、彼女の言葉が頭に浮かんだ。
「ん? どうかしたの、瞳依ちゃん」
不思議そうな顔で私を覗き込んだキング。
あーこれって言っても良いのかなぁ。
「えっと、実はですね」
「うん」
「私の友達が会社見学に来たいと」
遠回しの説明から入ってみた。
「へぇーうちに興味あるの?」
「いえ、そうじゃなくて。私の職場に興味があるらしくて。凄く心配性な友達なんですよね」
あはは、と笑う。
「そう。その子は瞳依ちゃんがとても大切なんだね」
「はい」
私を心配して、社長に会いたがってるとか言いにくいな、やっぱり。
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