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終業時間を迎え、制服から私服に着替え終わると、帰り支度をしている数人の同僚に見送られてロッカールームを出た。
今日は嫌味を言う人達と遭遇しなくて良かった。
いつもなら、二言三言苦言を呈してくる連中が居たりするんだよね。
見送ってくれた人達は、気さくに話しかけてくれるし嫌味なんかも言ってこない人達だ。
女の世界って、本当に色々と面倒臭いと思う今日この頃である。
ちなみに伊藤先輩は飾り時計の針がピッタリと5時半を指した瞬間に、スーパーダッシュで受付から居なくなった。
なんでも今日は医者の卵達との合コンがあるらしい。
いつもにも増して気合の入った化粧をしてる理由はそれらしい。
毎日楽しそうに生きてて羨ましい限りだな。
ロビーに出て樹の待つ場所へと急ぐと、彼女の周囲にはちょっとした人垣が出来てた。
声を掛けようかと遠巻きにしている男の人達は、タイミングを見計らってるのか容易には近付かない。
まぁ、これだけ近寄ってくるなオーラを出されたら、声なんて掛けられそうにないけどね。
「お待たせ。ごめんね」
ソファーに座って参考書を読んでいた樹に声をかける。
「大して待ってないわよ。参考書読む時間に当てられたし。もうすぐレポートの提出期限なのよ」
そう言いながら医学の参考書を閉じると、通学バックにそれをしまった樹。
「そんな忙しい時期に来てもらってごめん」
「馬鹿じゃない? 何を謝ってるのよ。私が来たくて来たんだから問題ないわ」
今日も素晴らしく女王様です。
「なら、いいけど。じゃあ行こう。向こうのエレベーターで最上階に上がるんだよ」
キングとの待ち合わせは社長室。
人目を気にしなくても良いのでそこになった。
「分かったわ」
立ち上がった樹は相変わらず背が高くてカッコいい。
私ももう少し身長が欲しかったな、なんて思いつつも歩き出す。
樹に集まる視線がこれ以上増えるとウザいもんね。
それに、樹がここでキレるのはありがたくないし。
この子ってば、誰が相手であってもはっきりと物申すタイプだから。
「広くて綺麗な会社ね」
「うん」
「瞳依もしっかり受付の顔になってるみたいで安心したわ」
「仕事にも慣れたし、過しやすい環境だか心配いらないよ」
「なら良かった。無理矢理就職させられたから大丈夫なのか心配だったしね」
「ありがと」
樹と並んで会話しながら通路を進むとエレベーターまではすぐだった。
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