1)止まない雨

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 さて学校に行こう、と私は玄関の扉を開けたが―― 「今日も雨……」  もう七月だというのに、梅雨が明けず、ずっと雨が続いている。  しばらく、太陽を見ていない。  ため息をついて傘を差し、「いってきます」と言って私は学校への道を急いだ。  高校までは徒歩十五分ぐらいだ。  大したことのない距離だが、連日の雨で土の道はぬかるんでローファーが汚れるし、で最悪だ。 「あーあ」  てくてくと歩いていて、私は違和感に気づいた。 「あれ?」  もうそろそろ、学校が見えてきていいはずなのに。どうして、私は草むらの中に立っているんだろう。 「……道、間違えた?」  間違えるような通学路じゃないのに。  踵を返しかけたところで、話し声に気づいた。 「雨、止まないね」 「このままじゃ、草木にもよくないだろなあ……」  やけに甲高い声が気になって、歩きながら声のする方に顔を向けたら……  え!?  狐が二匹いて、その狐たちがぺちゃくちゃとおしゃべりしていた。  狐が、しゃべってる!?  思わず二度見してしまった。  どうなっているのだろう。夢でも見ているのだろうか。 「……土地神様が不慣れなんだろうね」 「何とかしないと。誰かお参りにでも行ってくれないかね」 「あんな寂れた神社じゃねえ。かといって、妖怪の私たちが行っても……」  おしゃべりは、続いている。  土地神、って言ってたけど……  私は混乱しながらも、ひたすら歩き続けた。  そしてふと、開けた場所に出る。 「……神社」  見たことのない神社だった。 『誰かお参りにでも行ってくれないかね』  さっきの狐の言葉を思い出して、私は試しにその神社に入ってみることにした。  このままじゃ学校に着けそうにもないし!
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