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「だからさ、泣き止んでよ。あなたが泣いてるから、このあたりずーっと雨で。作物も草木も枯れちゃうよ。川だって危ないし」
「うん……ぼくもまずいと思って、どうしよう泣き止まなきゃと思ったら、ますます泣けてきて……」
彼の目が、また潤む。どうやら、元々かなり泣き虫な神様みたい。
「ここに来たばかりで淋しくて不安なんだね。私、ちゃんとまた来るから、がんばってね」
神様相手なのに、近所の子に接するような口調になってしまった。だってこの神様、まるで子どもなんだもの。
がんばる、と言って彼は初めて、笑顔を見せた。
神様は途中まで、送ってくれた。神様がにこにこしているからか、さっきまでの雨が嘘のように晴れている。
「このまま右手に進めば、この界から出られて君の目的地に行けるよ」
「ふーん?」
よくわからないけど、私は神様の説明に相槌を打つ。
「ありがとう。また来るね。でも、今度はどうやってあの神社に行けばいいの?」
あれはどう考えても迷い込みました、って感じだったし。次も同じように行けるのだろうか?
「次は、ぼくが招いてあげるから。週三回ね! 絶対だよ!」
念押しして、彼は笑顔で手を振った。
はいはい、週三回ね。
神様と別れて、私はしばらく歩いた。右手に進めば目的地に行けると神様に言われた通り、学校が見えてきた。
「でも、雨止まないなあ」
さっき一瞬止んだのに、と呟いて私は思い至った。
もしかして、うれし泣きしてるんじゃなかろうか。
有り得る、と苦笑して私は速足で学校に向かった。
次行くときには、キャロットケーキでも持っていこうかな? 喜んで、大泣きしちゃったりして。
(おわり)
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