第1章 君の気持ち

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 私も、左手を引っ込めて右手を差し出す。 「うん、よろしくね。……奏太」  ぎゅっと彼は、私の手を握りしめた。私も、その手を握り返す。今、彼の瞳には、私はどう映っているのかな。  春の夕日の下、二人の影は、真っ直ぐにすうっと、伸びていた。  ―――二日後。月曜日。  いつものように、朝7時に目が覚める。眠いのを我慢して、ベッドから体を起こす。洗面所で顔を洗い、うがいをする。寝癖のついた髪を整え、二階の部屋に戻り、部屋着から制服に着替える。 「志歩~。起きたの?」  一階から母の声が聞こえる。私は、はーい、と答えると、「朝ごはん、出来たわよ。早く食べなさい」と言ってきた。  階段を降りると、ダイニングの方向から良い匂いがしてきた。私の大好きな味噌汁の匂いだ。  我が家は基本的には朝は和食だ。父が昔ながらの人だからかもしれない。パンも好きだけど、お米かな。やっぱり。腹持ちも良いし。  ダイニングに行くと、父がもう椅子に座っていた。 「おはよう、お父さん」 「ああ、おはよう。志歩」  手短に挨拶すると、父は、新聞を読み始める。 「志歩、ほら座って。食べるわよ」  母がお茶をコップに注いで、テーブルに置き、椅子に座る。私も、言われた通りに座る。  テーブルにあったのは、ごはん。豆腐の入った味噌汁。卵焼きに、焼き魚、そして納豆。それと、サラダ。あ、あとお茶。  普通だ。私の普通なところは、もしかしたら遺伝なのかもしれない。そんなことを考えながら、いただきます、と手を合わせご飯を食べる。  美味しい。やっぱり、いいね。母は料理が上手だ。私はどうなのか聞かれそうだから、それは無視しておく。 「あら」  母が何かに気づいたのか、私の顔を見てくる。  ん? 何だろうか。 「志歩、お化粧でもしたの?」  え?ますます、意味がわからない。言っておくが、私は、化粧をしない。同年代の女の子はみんなしているけど、メイクにはそこまで興味がないのだ。  かと言って、清潔感がないわけではない。しっかりと、髪や眉毛は整えるし、目の下にクマができないように、睡眠には気を付けている。お肌の天敵は、寝不足なのだ。もちろん、ビタミン不足にも気を付けているし、紫外線対策もしている。            
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