第1章 君の気持ち

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 いつも通りの日常。いつも通りの毎日。  それが、退屈だと思ったことはない。変わったことが起こらなくても、笑って、楽しく暮らせればそれで良いと思う。刺激を求めている人から見れば、私の日々は平凡そのもの。でも、そんな生活が私は好きだった。  そんなある日。高校一年生の頃。席替えがあった。そこで私は、ある男の子と隣の席になった。藤奏太(ふじそうた)くん。こういうこと言うと、大抵マンガの展開のように、イケメンのスポーツマンなどのことを言ってるのかと思うだろうけど、違う。どちらかと言えば、普通。そう、彼にはそんな言葉が似合う。  真面目だけど、遊ぶときは遊ぶ。大勢の輪にいるときも、ひとりで本を読むときもある。テストは全教科の平均は、中の中。スポーツは、中の下。顔は、まぁ、悪くはない。でも、万人受けはしないタイプ。  そう、彼はそんな人だ。まるで、私のように平凡な人。だからかも知れないけど、私はいつの間にか、そんな彼が気になっていた。  でも、彼とはあまり話したことがない。隣の席だから、授業でたまに班を作るときに話すくらい。あとは、教室の掃除の時かな。それ以外では、まったく。  お互い、趣味が何かも分からない。部活も同じじゃない。帰り道も違う。基本、彼は誰とも話すタイプだけど、仲が良い人と以外は、そこまで積極的には話さない。  まぁ、普通だ。私も、何となく気が合う人とは友だちになるけど、あとはクラスメイトの人たちって感覚。  みんな良い人だから、嫌いにはならないし、挨拶や雑談くらいはする。けど、それだけ。彼も私と同じだから、私と話す機会が中々ないのだ。  いや、そもそも興味がないのかもしれない。 「聞いてる?」 「えっ?」  急に彼に話しかけられ、驚く。 「いや、消しゴム、早見さんのだよね?」  彼の手の平には、私の消しゴムが乗っかっていた。 「あっ……うん、私の。ありがとう、落としてた?」  彼は、私の言葉を聞くと首を縦に振った。 「机の端に置いてたからだな。はい、これ」  渡された消しゴムを、受け取る。初めて、彼の指が私の手に触れた。温かい手。いや、私の体温が上がっているだけなのかも。 「ごめんね。わざわざ」 「いや、いいよ」  
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