第1章 君の気持ち

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 そう言って、彼は前を向いた。授業中だから、当然だけど。何だか、そっぽ向かれたような感じで、ちょっと寂しかった。私もすぐに前を向く。  ふと、ちらっと彼の顔を見た。すると、私の視線に気づいたのか、彼も私を見てきた。  思わず、目が合う。  すると、彼はすぐに目を逸らした。そうだよね、急に隣の人が見てきたら、そうなるよね。  それからだった。彼は、授業中にも、掃除中にも、私とは話さなくなった。  どうしてだろう。理由が分からなかった。  たまに目が合うときは何度かあった。不思議と。 「何でだろう」 「何が?」  親友の由実ちゃんが、私に尋ねる。どうやら、心の声が漏れてたみたいだ。 「あ、いや、その。何でもないよ、うん!それより、ご飯食べよ!」  誤魔化そうと取り繕う私を、変に思う由実ちゃん。けど、それほど気にはならなかった様子で、「分かった。じゃあ、中庭行こう!」と、弁当を持って教室を出た。私も、うんと頷き、付いていく。いつの間にか、授業は終わって、もうお昼だ。  彼が私と話さなくなって3週間。こんなに長い間、一度も話さないことってあるだろうか。ケンカしている相手、嫌いな相手なら分かる。でも、悪いことをした記憶はない。されたこともない。  じゃあ、何故?  考えても、答えは出なかった。そんな気持ちとは、裏腹に食事の箸は進む。 「はぁ」 「志歩。あなた、大丈夫?今日、ううん、最近、なんか変だよ」  また、心の声が漏れていた。  親友の由実は、心配そうに私を見てくる。話してみようかな、気分も楽になるかもしれない。 「由実、実はね……」  一通り、話すと由実はうーん、と唸った。  どうしたんだろう、お腹でも痛いんだろうか。 「……志歩、さては、あなた、惚れたね?」 「……はっ?」  親友から出たのは、予想外の台詞。  惚れた? 誰が? 誰に?   一瞬、何のことを言っているのか、分からなくて考える。そして、気付いた。 「っ!ち、違うよ!そんなんじゃないから!断じて、違う!」 「いやいや、それは絶対そうだって。あなた、変なところあるからね、藤みたいな男が好きになるのも十分分かるよ」  『好き』という言葉に反応して、身体が熱くなる。 「ほら、顔が赤くなった」    
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