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「んじゃ、早見さんの分も買っとくよ」
「え、私の分まで?」
「ついでだよ。どうせ買うなら、どっちでもいいだろ?」
それはそうだけど、買ってもらうのは申し訳ない。そもそも、買ってもらうほど、仲良くはない。
「悪いよ、そんなの。お金、出すよ」
財布から、お金を出そうとする私の手を、彼は、握ってきた。
「気にすんなよ、大した値段じゃないし。早見さんもファンみたいだから、気まぐれに買うだけだよ」
「あ、ありがとう。でも、良いの、ほんとに?」
念のため確認を取る。後で、やっぱり返してみたいなこと、言われたくないし。
「いいよ、別に。……なぁ、このあと、暇か?」
え、何。何でそんなこと、聞くの。も、もしかして、これは、あれかな。デートのお誘い。
動揺している私に気づいたらしく、慌てて、彼は、否定した。
「ああ、いや、悪い。変な意味じゃなくて。ほら、隣の席なのに、中々話すこと、なかっただろ?たまには、会話すんのも良いかなと思ったんだけど。やっぱり、迷惑だったか?」
彼の顔は、悲しそうに見えた。何だか、怒られた子犬みたいだ。思わず、くすっ、と笑ってしまった。
「ううん、そんなことないよ。土曜は、いつも暇してるの。いいよ、どこか行く?」
私の返答に、彼は、表情が柔らかくなった。
「そ、そうだな。……うん、喫茶店でも行くか」
喫茶店かぁ。あんまり、行ったことないけど。
「分かった。行こう」
了承して、本を買ってもらったあと、彼と喫茶店へ向かった。
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