第1章 君の気持ち

6/12
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「んじゃ、早見さんの分も買っとくよ」 「え、私の分まで?」 「ついでだよ。どうせ買うなら、どっちでもいいだろ?」  それはそうだけど、買ってもらうのは申し訳ない。そもそも、買ってもらうほど、仲良くはない。 「悪いよ、そんなの。お金、出すよ」  財布から、お金を出そうとする私の手を、彼は、握ってきた。 「気にすんなよ、大した値段じゃないし。早見さんもファンみたいだから、気まぐれに買うだけだよ」 「あ、ありがとう。でも、良いの、ほんとに?」  念のため確認を取る。後で、やっぱり返してみたいなこと、言われたくないし。 「いいよ、別に。……なぁ、このあと、暇か?」  え、何。何でそんなこと、聞くの。も、もしかして、これは、あれかな。デートのお誘い。  動揺している私に気づいたらしく、慌てて、彼は、否定した。 「ああ、いや、悪い。変な意味じゃなくて。ほら、隣の席なのに、中々話すこと、なかっただろ?たまには、会話すんのも良いかなと思ったんだけど。やっぱり、迷惑だったか?」  彼の顔は、悲しそうに見えた。何だか、怒られた子犬みたいだ。思わず、くすっ、と笑ってしまった。 「ううん、そんなことないよ。土曜は、いつも暇してるの。いいよ、どこか行く?」  私の返答に、彼は、表情が柔らかくなった。 「そ、そうだな。……うん、喫茶店でも行くか」  喫茶店かぁ。あんまり、行ったことないけど。 「分かった。行こう」  了承して、本を買ってもらったあと、彼と喫茶店へ向かった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!