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にしても、チェーン店じゃなくて、レトロなところを選ぶんだなぁ。
私は、着いた喫茶店を見て、思った。赤レンガの外装に、木目調の取っ手付きのドア。テーブルもイスも、シャンデリアも、どれもアンティークな店内。
窓際には、小さな観葉植物が置かれており、テーブルには、呼び鈴が置かれている。中は普通の広さで、落ち着くBGMが流れていた。
女性の店員さんに案内され、奥の席に座る。
フカフカのソファだ。良い感じだ。
「あの、私、こういう所、来たことないんだけどさ。藤くんは、よく来るの?」
「毎日、来るよ」
「ええっ!?」
びっくりして、変な声が出る。横側の席にいた老夫婦が、くすりと笑った。
「嘘。ほんとは、土曜日だけ」
彼は、真顔でそう返した。
嘘って、そんな冗談めいたこと言うタイプとは思わなかった。でも、土曜日は来るのか。
「いつも、友だちと来るの?」
「いや、ひとり。こんな所、誘って来るような男子、うちの学校にいると思うか?」
彼は、笑って、私を見る。
「そ、それもそうだね、ははっ」
ひとりって、すごいなぁ。私だったら、こんなオシャレなところ来れないや。絶対、外から眺めるだけで終わっちゃう。
「注文してもいいか?」
メニューを取り、聞いてくる。
「うん、どうぞ」
呼び鈴を鳴らすと、先ほどの女性店員さんがやって来た。
「ご注文ですね、何に致しますか?」
「アイスコーヒーに、ハムサンドください」
早々と注文する彼。
「はい、分かりました。お嬢様は?」
「え、あ、はい!私は、えっと……」
慌てて、メニュー表を見る。どうしよう、何にしよう。よく考えたら、まだ決めてなかった。
「えっと……うん、と……」
悩む私を見て、彼が、また注文し出した。
「アイスティーひとつ。あと、ハムサンド追加で」
「アイスティーに、ハムサンド追加ですね。ご注文は、以上で宜しいですか?」
店員さんの問いに彼は、頷いた。店員さんは、丁寧に頭を下げると、奥へと向かった。
「あ、あの、私まだ……」
「あ、悪い。代わりに早見さんの分も頼んで。注文、決まってなかったみたいだからさ」
彼は、私の分も頼んでいてくれた。何気ない優しさに、何だか、心がぽかぽかしてきた。
「ごめんね、馴れてなくて。初めてだから」
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