スイートルームの新婚作家

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****** 俺は本館29階のプレミアムスイートを訊ねた。 ノックすると、浅香先生本人は自らドアを開けて出迎えてくれた。 「どうぞ、支配人」 「失礼致します」 俺は軽く頭を下げて部屋の中に入った。 直樹賞作家として活躍する浅香先生は、当ホテルのスイートを執筆部屋としていた。 「副支配人から訊いたよ。AIが決めた女性と婚約したんだって」 「まぁ」 俺は柔らかな笑みを浮かべて答えた。 「まぁ、座って」 リビングルームのソファにお互いに腰を下ろし、話を交わした。 話題は俺と優亜の婚約話。 「しかし、世間って狭いね。支配人の相手はホテルの従業員でしょ?」 「正直な話。彼女のコトは知らなくて・・・」 300人近い、従業員が働く巨大ホテル。従業員の顔なんて、いちいち憶えていない。 「そうなんだ・・・で、第一印象はどうだったの?」 「え、あ・・・」 このまま、浅香先生の質問に素直に答えていけば、小説のネタにされるかもしれない。 「どうと言われても・・・赤い運命の糸は感じませんでした」 「あれ?副支配人の言葉だと・・・相手の子を溺愛していると訊いたよ」 夕都のヤツ・・・浅香先生に余計なコトを言って・・・ 「それは・・・」 「でも、結婚するんだよね・・・」 「・・・まぁ、そのつもりです」 ワインの勢いで手を出してしまったし、ホテル王の椅子は欲しいし。
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