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 少し意地の悪い笑みで言いながら自分の胸を叩いて自信満々で言い放つ美羽を、朱雀は胡乱げな眼で見返す。 「先輩って……お前、俺より弱くてよくそんなこと言えるよな」 「なっ……!何よソレ!私の方が先なんだから、先輩っていうのは間違ってないでしょ!敬いなさいよ、少しは!」 「あー、きゃんきゃんうるさい……」  顔を顰めて、美羽がいる方の耳を指で塞ぐ朱雀の様子に、凪子はついつい苦笑を洩らした。  それから、思いついたように朱雀を呼ぶ。  ふ、と顔を上げた朱雀に、微笑んで見せた。 「あんたの魂は確かに泰山府君から戻してもらったものだけど、それはごく一部なの。あたしの配下に降った時点で、あたしとあんたの魂は繋がった。つまり、一蓮托生、生きるも死ぬも一緒、ってことよ。だから」  凪子は斜めに構えていた姿勢を正して、朱雀へと向き直る。 「あんたが、一人で生き残ることは……これから先ないってこと」  その言葉に、朱雀が大きく目を瞠った。  それを見て気を良くしたらしい凪子は、美羽に澄を連れて先に帰るように言う。そのまま踵を返して帰路を辿り始める凪子の背を見送っていた朱雀は、我に返ったようにそっと自身の胸に手を当てた。それから、未だ花弁を落とし続ける桜の老木を振り返る。  その唇に小さな笑みが浮かんだ。     
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