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二
ビル街の一角、少々寂れた感のある界隈に、ひっそりとその看板はあった。
『近江超常現象調査事務所』
飾り気のないゴシック体で書かれたその看板は、あちこち錆びて、随分とくたびれている。
いかにも、はやってなさそうな空気が濃厚に漂っていた。
年季の入った三階建てのビルは、この事務所以外入っていないらしく、閑散としている。
事務所は二階にあった。
広くも狭くもない事務室内は、壁一面のキャビネットと、大きな事務机、応接セットがあるだけの、シンプルなもの。日当たりだけは抜群で、窓から差し込む朝日が明るく室内を照らしていた。
応接セットのソファに、猫のように丸くなって眠っている主を、脱色して金を通り越して白っぽい色になっている髪の二十代前半と思しき女が声をかける。
「おっはようございます、凪子サン。朝ですよー。朝ごはん食べます?」
毛布に包まって低く唸った凪子は、「トーストとベーコンエッグ…」と寝言のような声音で呟いた。それに呆れたように溜息を洩らし、手にしたコンビニの袋をテーブルにがさり、と音を立てて置く。
「お給料上げてくれたら考えます。ほら、さっさと起きてくださいよ」
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