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 ほんと寝起きが悪いんだから、とぼやきながら毛布の肩あたりを叩いて、部屋の隅に置いてあるキャビネットの上のコーヒーメーカーをセットしに向かった。 「んー…美羽(みう)ちゃん、コーヒー」 「今、淹れてます」  素っ気なく返しながら、美羽はテーブルの上に積まれた雑誌や新聞を適当に寄せて、その下からリモコンを探し出すと、壁際に置かれたテレビに向ける。  部屋の中で唯一真新しい薄い大型テレビが、しばしの間を置いてから映像を映し出した。  もそもそとまだ毛布に懐いている凪子に、「もう」と呆れた目を向けてから、チャンネルを変えようとリモコンを構えながらテレビ画面を見る。ふと、その目が瞠られた。 「ちょ、凪子サン、凪子サン!この人、昨日の依頼人じゃないですか?」 「えー?」  思い切り顔を顰めながら毛布から顔を出した凪子は、テレビに映し出されたモノクロ写真とその下に表示された名前に目を留め、動きを止める。テレビはちょうどニュースを流しているところだった。 『――――― が、自宅で死んでいるのが発見されました。亡くなったのは派遣事務員の菊池雪絵さんで、争った形跡も外傷もないことから…』 「やられた」  舌打ちをして呟いた凪子は、苛立たしげに毛布を撥ね除けると、だん、と音を立てて床に降り立った。 「あたしが帰ったあとか。まるで気配を感じなかったのに」     
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