4/13
前へ
/123ページ
次へ
 仕方ないな、と言いたげな表情で苦笑すると、美羽は首を傾げて凪子を見上げた。 「こうなったら、とことんやるんでしょ?」  苦笑から、どこか面白がるような笑みに変わった美羽に、カップに口をつけたまま目を向けた凪子が口の端を上げて笑う。 「そりゃあね。売られたケンカは買う主義だから」 「…別に喧嘩売ってるつもりはないと思いますけど…」 「売ってるでしょ、確実に!」  ソファの上で膝を抱えてコーヒーを飲みながら半笑いで言った美羽に、コーヒーのカップを突き付けながら鼻息荒く言う。 「あたしのいるときを避けて、依頼人殺してるんだから!しかもそれをあたしに感づかせないなんて、用意周到だわ」  よほど悔しかったのか、その顔はまさに鬼の形相だ。ちらりと上目遣いでそれを見やった美羽は、まずいものを見たと言いたげに顔を顰めて目を逸らし、そっと凪子から距離を置く。 「美羽ちゃん、これの管轄どこだっけ?」 「マンションの住所からすれば、紅町(べにまち)ですね。――――――― 菅原(すがわら)さんがいますよ。担当してるかどうかは謎ですけど」  凪子の意図を読み取って、美羽が悪戯っぽい笑みを浮かべて答えた。 「菅原か…。アイツ下っ端だからな……ま、当ってみるか」     
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

305人が本棚に入れています
本棚に追加