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仕方ないな、と言いたげな表情で苦笑すると、美羽は首を傾げて凪子を見上げた。
「こうなったら、とことんやるんでしょ?」
苦笑から、どこか面白がるような笑みに変わった美羽に、カップに口をつけたまま目を向けた凪子が口の端を上げて笑う。
「そりゃあね。売られたケンカは買う主義だから」
「…別に喧嘩売ってるつもりはないと思いますけど…」
「売ってるでしょ、確実に!」
ソファの上で膝を抱えてコーヒーを飲みながら半笑いで言った美羽に、コーヒーのカップを突き付けながら鼻息荒く言う。
「あたしのいるときを避けて、依頼人殺してるんだから!しかもそれをあたしに感づかせないなんて、用意周到だわ」
よほど悔しかったのか、その顔はまさに鬼の形相だ。ちらりと上目遣いでそれを見やった美羽は、まずいものを見たと言いたげに顔を顰めて目を逸らし、そっと凪子から距離を置く。
「美羽ちゃん、これの管轄どこだっけ?」
「マンションの住所からすれば、紅町ですね。――――――― 菅原さんがいますよ。担当してるかどうかは謎ですけど」
凪子の意図を読み取って、美羽が悪戯っぽい笑みを浮かべて答えた。
「菅原か…。アイツ下っ端だからな……ま、当ってみるか」
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