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 だが、まさに、五代目の呪詛によって鬼が分家筋を消して回っているのなら、異常な事態に陰陽寮が動いてもよさそうなものだ。しかし、それをしていない。  凪子には、それが不思議でならなかった。  優雅にソファに身を沈めた椚が、ふ、と口の端だけで笑う。 「お前が言うとおり、分家筋の人間が死んだのが、鬼の仕業であるならば、そいつはかなり頭がいいらしい」  とん、と指先で自分のこめかみを指しながら言うのに、凪子は怪訝そうな眼を向けた。 「どういう意味?」 「まずは、菊池家の別宅。ここで術者たちが集団生活をしていたのは話したな」  凪子が頷くのを待って、椚が続ける。 「この別宅には、術者のほかに、各分家から世話役として多くの人間が寝泊まりしていた。それこそ、常時二十人以上。…ある日、その家にいた連中が全員死亡する事故があった」 「…事故?」  二十人からいる人間が一斉に死亡するような事故とは、それだけでおかしくはないか。  凪子が目でそう問うと、椚は口の端の笑みを深めた。 「―――― 深夜にガス漏れをしていたらしくてな。一酸化炭素中毒で呆気なく」  知らず、息を詰めた凪子は、ただ椚を凝視する。     
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