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「全員の死因が一酸化炭素中毒なら、疑う余地もない。古い日本家屋だ。恐らくは結界か何かで周囲を密閉したうえでガス漏れを引き起こしたんだろうが、なかなか周到なやり方をすると思わないか」
そこに詰めていたのは術者集団。術で攻撃されたのなら、当然応戦しただろう。だが、それを見越してか、それとも他の理由か、鬼はもっとオーソドックスな方法を選んだ。
「―――― 下手を打って、陰陽寮が動くのを避けたかったのかもしれないがな」
ふと思いついたと言いたげに、椚が漏らすのを聞いて、凪子は知らず落としていた視線を上げる。
そうか。
異形の気配の薄い鬼。
必要最低限の力だけを使って、事故や病気に見せかければ、大きく騒がれることもない。
陰陽寮が本格的に乗り出せば、自身も動き辛くなるから、できるだけ『事件』として扱われないようにしてきたのか。
でも、もしそうだとするなら。
「…どうして、雪絵さんの時は直接手を下したのかしら」
いや、あれも、結局は身内もおらず、現場の状況からも事件性が薄いと判断されて、原因不明の突然死、とされて終わっている。だが、本当なら、もっと違うやり方を選んだはずだ。
眉を寄せて考え込む凪子を見ていた椚は、小さく首を傾げる。
「お前がいるからじゃないのか」
「え?」
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