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「菊池 雪絵に接触したんだろう?そいつも、本当は今までのようにうまくやるはずだっただろうが、お前が絡んできたから、予定が狂ったんじゃないのか?」
至極当然のように言われて、凪子はますます眉間の皺を深くする。
「焦ったってこと?……でも」
何か納得できない。
『――――― お前じゃ相手にならない』
「むしろ、喧嘩を売られてる気がするんだけど」
呟いてから、向かいに座る椚を見る。
切れ長の目は、今一つ何を考えているか掴めないが、それでも、何事か考えているように見えて、彼が何かを言うのを待ってみた。
やがて、傾げていた首を起こして、椚は面白がるような笑みを浮かべた。
「そうだろうな。鬼の考えることなど判らないが、元が人間であるなら、そこに要因があるかもしれないぞ。まあ、後は自分で考えてみろ」
その言い様は、答えがわかっているようにも聞こえて、凪子は盛大に顔を顰めて椚を見る。だが、相手は笑みを深めて、「もうおしまい」と言うように、ひらひらと手を振っただけだった。
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