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ぽつ、と低く呟いて、勢いよくその襖を引き開けた。他の障子や襖と違って滑りの良いそれは、すたん、と軽やかな音を立てて柱にぶつかって止まる。
部屋には何もなかった。がらんとした和室には、家具も床の間もない。
けれど、重苦しい思念だけが濃密に凝(こご)っている。
この場であることは間違いない。
美羽は首を巡らせて注意深く部屋を見回した。
天井から、壁、柱、段々と視線を下げ、床へ。畳をじっくりと見つめ、中央の畳を前に膝をつく。目の前で右手の人差し指を立てると、すう、っと爪が伸び、猛禽類のような鋭い鉤爪になった。それを畳の縁に引っ掛け、力任せに跳ね上げる。
舞い上がった埃に口と鼻を覆った美羽は、剥がした畳の下を覗き込んだ。
ぽかりと、口を開ける真っ黒な深淵。
うっすらと見える階段を躊躇いなく降りて行く。
タールのように重く纏わりつくような瘴気に目を眇め、美羽は迷うことなく階段を降り切って、まっすぐに奥へと向かった。
闇の中に現われたのは、小さな祭壇。中央に、木で作られた人形(ひとがた)が置かれている。
それを手に取って、表面に書き込まれた文字を小さな声で読み上げた。
「……三沢、雛子。……やっぱり、三沢家の六代目は、分家に呪殺されたんだ」
抑揚のない低い声。
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