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漱石がのぞいた穴
ロンドンの霧は濃かった。
今日だけでなく、明日、明後日もそうだろう。
コートの襟を立てながら、漱石は日課の散歩をしていた。
散歩が心身のバランスを保つのに役立ってたが、そろそろ限界が近づいてきていた。
同僚にひそひそと噂話をされている気がする。
鬱気味なのがバレているのだろうか。
気分を変えなければ。
歩きながら、ふと脇を見ると、歩いたことのない狭い道がある。少し行ってみるか。
日常の些細な変化を楽しめば、自分を騙し騙しやり過ごせる。
しばらく、何の変哲もない道を歩いたが、
どうやら道に迷ったようだ。漱石はキョロキョロした。
いくら歩いても、同じところをグルグル回っているような気がする。ツイてない。
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