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そこには、見たこともないピカピカの車や電車が走り、日本人も奇妙な服を着ている。
まるで未来を見ているようだった。
夥しい数の建物も高くて頑丈なつくりに見える。
また、道行く日本人のスタイルの良さで衝撃を受けた。
顔が小っちゃくて背が高い。
さっき漱石が見た、ガラスに映った自身の体型とは全然違う。
さらに漱石を驚かせたのは、その日本人が読んでいる本の作者名が自分だったことだった。
何と、本屋の棚にも、教科書にも、自分の名前があるではないか。
狐につままれた様な気分で、漱石は穴の中を食い入るように見続けた。
「バカな。これは最新の映画か何かか?」
漱石は目をまん丸にしながら、ピエロに尋ねた。
ピエロはニヤリと笑って「いやいや、本物の『あなたが一番みたいもの』さ。」
と言うと、突然大きな音がして、あたりは白い煙に包まれた。
そして、ピエロは忽然と居なくなっていた。
気が付くと、漱石はいつもの散歩コースに呆然と立っていた。
視線の先には、さっき入って行った狭い道の入り口があった。
漱石が見たのは、100年後の日本だったのだ。
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